2011年3月31日木曜日

やることはいっぱいあるのに

やることはいっぱいあるのに、逃避を続けているこすげです。

さて、原子炉の中で生まれる元素についての話をば・・・

235Uの原子核に中性子をぶつけてみると

このシリーズの1回目2回目では、235Uの原子核に中性子をぶつけると、その中性子が原子核にいったん吸収され、原子核の重さがその中性子分増えることで、235U が 236U になって、この原子核が居心地が悪いので分裂しちゃうぜ、って話をしたわけです。
で、どう分裂するかって言うと、2回目では、「92Kr と 141Ba、そして2個の中性子に分裂します」って書きました。でも実はですね、この2つに分裂するとは限らないんです。じゃあ、どのように分裂するかというと、ある範囲の元素に分裂することは確かなんだけど、どれになるかは確率的にしか分からないってことになります。どの元素にどのくらいの割合で分裂するかってのは、「核分裂物質収率」って名前のデータになっていますが、ここを見てもらうとその具体的な値がわかります。
上の資料では、図1と図2の2つグラフがありますが、横軸が分裂した後の元素の質量数(原子核に含まれる陽子と中性子の数の合計)を表しています。また縦軸が確率ですが、グラフの線が上にあるものほど良くできるって解釈してくれてOKですね。
図1と図2の違いは、図1が235Uの原子核に弾丸としてぶつける中性子の速度(=エネルギー)が160MeV(メガ・エレクトロンボルト これって結構速い - エネルギーが高い )の場合で、図2は、弾丸としてぶつける中性子の速度が低い(熱中性子ってのは中性子弾丸がかなり低いというが、人間で言うと「お酒に酔ってふらついている」状態の中性子)場合です。
こんな感じで、弾丸とする中性子の速度(エネルギー)によっても、どんな風に分裂するかの確率が違います。


ちょい確率について


ええと、確率って分かりにくいってよく言われますので、ちょい横道にそれますが解説を。
一番身近な確率って、多分「降水確率」じゃないでしょうか。これ結構誤解されていてですね。降水確率が10%だと「雨は降らない」、逆に降水確率「90%」だと「雨は降る」って思っちゃいます。で、降水確率が10%の時に雨が降ると「天気予報は当たらない」なんて怒ったりするわけですが、実は「怒るのはちょっと待ってね」ってことなんです。
実は、この降水確率10%を正しく評価するには、「過去10回、降水確率10%の予報を出したときに、10回の10%である1回、雨が降ったかどうか」という事を調べなければいけません。
気象庁が過去何回「降水確率10%」の予報を出したか分かりませんが、例えば1000回「降水確率10%」の予報を出したとすると、実際に100回前後、雨が降っていたら「おお立派」って事になる訳です。100回からかなりずれていたときに「国民の税金を使ってスパコン作って、それで計算してんのに、何を予報してんじゃ、ワレ!、仕分けされて当然だな」って怒ってもOKなんですね。
このことって、ちゃんと勉強していればわかることなんですけど、僕も含めてなんか「頭では分かっていても、身体が納得してない」ってことなんですけどね。実は、このブログを書くに当たって気象庁のWebページで、天気予報検証データを探したら、ここにありました。
ええと、このデータから、わかりやすく、0%~100%の降水確率を出したときに、実際にはどんな割合で雨が降ったのか? ってデータは「降水確率予報の検証結果(2010/9~2010/11のデータ)」って名前で公表されてました。見ていただければ分かりますが、思ったよりいい線行ってますが、降水確率が低いときには実際の確率は低め(雨が降らなかったことが多い)で、降水確率が高いときには高め(雨が降ったことが多い)みたいです。
しかし、このデータって報道されないなぁ。。。せっかく、国民みんなに確率現象ってどんなものなのか理解してもらうための良い例なのに。。。まあ、マスコミ自身が分かってないのかもしれないけどなぁ。。。
スパコンの仕分けでもねぇ。。。ちゃんとこんな実績データを元に話をしたんだろうか・・・「普通は割と良く当たっているけど、台風とか災害時の的中率がわりーから、もうちょい性能の高いスパコン作った方がいいよねー」とか、「天気予報があたらねぇと、こんだけの経済損失がでちゃうから、こんだけ税金突っ込んでも、○年で元とれるよねー」とか。。。ぶつぶつ。。。
「降水確率なんてもんが使われるようになったときに、確率現象ってものを国民に理解してもうチャーンスって、なぜ国民の知恵の総量に責任を持つ文科省の役人なんかがおもわねーのか」とか、それをやろうとしても、「予算を取って、どっかの天下り財団法人に小冊子見たいなものを作らせて、それでオッケーだよね」で済んじゃうんだろうなぁ。。。とか。。。あー、愚痴が止まらん(笑。
で、話を戻すと、235Uに中性子をぶつけて分裂した結果は、確率的にいろんなもんができるって事なんですね。これが、ここでの結論(笑)。

核分裂してできた元素の行く末

さて、かなり長い愚痴を書いてしまいましたが、235Uに中性子をぶつけて分裂した元素はいろんな物ができますが、それらの元素の原子核は、このブログの言い方では居心地のよい状態にはなっていません。なので、様々な崩壊を繰り返して、居心地のよい状態になろうとします。
原子核分裂によってある原子核ができたとき、それらの多くの種類の原子核は、3~4回Β崩壊を行って、居心地のよい状態にたどり着きます。それをちょっと専門的に書くと以下のようになります。

原子核1 ー(崩壊)→ 原子核2 ー(崩壊)→ 原子核3 ー(崩壊)→ 原子核4

こんな感じで、最終的には居心地のよい原子核4になるのですが、崩壊を起こすごとに、放射線を出してくれちゃう訳です。この連鎖を専門用語ではフィッション・チェーンって言います。あ、もちろん、上の例では3回の崩壊で居心地のよい状態になっていますが、どんな崩壊を何回繰り返すかは、核分裂によってできた原子核1が何かってことで決まります。

半減期

さて、崩壊を起こし(ついでに放射線をまき散らせて)て原子核は居心地の良い状態になっていくわけですが、崩壊ってどんなタイミングで起こるのでしょうか。
実は、崩壊するまで時間は、原子核の居心地の悪さ具合で決まります。居心地がすげぇ悪ければ早く崩壊しちゃうし、それほどでもない場合にはそこそこ時間が経った後崩壊するんですね。
で、ここで重要なのが、崩壊ってのが前に説明した降水確率と同じ確率現象だってことなんです。ある原子核が崩壊を起こして次の原子核に変化するタイミングは、その原子核すべてが同じタイミングで崩壊するのではありません。居心地の悪い原子核は、確かに早めに崩壊しますが、居心地が悪くても我慢してなかなか崩壊しない原子核もあるんですね。このあたりは、擬人化すると、人のできたやさしい陽子や中性子ばかりの原子核と、喧嘩っ早い陽子や中性子が多い原子核とでは、居心地が悪い状態を我慢できる時間が違って、それぞれ我慢の限界に達すると崩壊するって理解でOKだと思います。
そこで崩壊するタイミングは、半減期という時間で表すことになっています。半減期というのは、元あった原子核が半分になるまでの時間です。じゃあ、半減期の2倍の時間がたつと、元あった原子核は0になるの? って誤解しちゃいそうですが、実はこれ、確率現象なんで、半減期の2杯の時間がたつと、元あった原子核の数は0にはならず1/4になります。言い方を変えれば、半減期の10倍の時間がたっても、崩壊しない奴は崩壊しない、ただその数は、(1/2)10 = 1/1024になります。大体元の元素が1000個あったら、半減期の10倍の時間がたっても、1個弱崩壊しないで残っているって計算になります。我慢強い陽子や中性子もいるってことですね(笑)。

原子炉の燃え残りカス

さて、原子核の半減期ですが、核分裂後の原子核の半減期は、ものすごい様々で、ミリ秒(1/1000秒)から、17000000年以上なんて奴もいます。これらの中で、問題になるのは、長い半減期をもつ原子核です。簡単にいうと、いつまで待っても減ってくれないわけですから。具体的には129I → 17,000,000年、107Pb → 7,000,000年、135Cs → 2,000,000年なんてのが、長寿命な原子核の代表選手です。

つかれたので、続きは次回ということにします。次回は具体的に原子炉のどこにどんな元素がどんな期間溜まるかって話になります。で、ここから先は物理学の話ではなく、原子炉工学の話になります。

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