2011年3月28日月曜日

放射線の話 ~実装の問題ではないが~

福島第一原発の事故で、放射能(放射線)に関する質問が、なぜか多く寄せられています。

この資料は一般の方が見て、即理解できるものではありませんが正確な記述なので、ぜひ参照していただきたい物の1つです。で、この資料の補足をしてみようと思います。

同位体の話

この世のすべての物質は、元素から出来ています。ここで、元素と言いましたが、正確には原子(げんし)と言います。あまり正確な表現ではないのですが、原子は、中心にプラスの電気を帯びている原子核(げんしかく)があり、その周りをマイナスの電気を帯びている電子(でんし)が回っていると考えて、大きな問題はありません。

そして、中心にある原子核ですが、これは、プラスの電気を帯びている陽子(ようし)と、電気を帯びていない中性子(ちゅうせいし)が、結合したものです。例えば、ヘリウム(飛行船や屋台の風船に使われている軽い気体です)の原子核の多くは、2個の陽子と、2個の中性子が結合した物になります。
ここで、陽子の持っているプラスの電気の量(電荷と言います)と、電子の持っているマイナスの電荷は、プラスとマイナスの符合が違うだけで、大体同じ量を持っているんですね。
それから、重さについてですが、陽子の重さ(1.67262158×10-27Kg = 0.00000000000000000000000000167262158 Kg)と中性子の重さ(1.67492721 ×10-27kg)はほぼ同じです。それに対して電子の重さ(9.10938188×10-31Kg)は、かなり軽く陽子や中性子の1/1000以下です。

ヘリウムの原子核は2個の陽子をもっているので、それと釣り合うようにヘリウムの原子核の周りには、2個の電子が回っています。
皆様方は、原子番号というのを聞いたことがあるでしょうか? 現在発見されている元素の一覧表は、周期表という名前で図にされていますが、この表で一番左上にあるH(これは水素のこと-すいそ)の文字の上に1、一番右上にあるHe(これはヘリウムのこと)の上には2と書かれていますが、これが原子番号と呼ばれているもので、その原子の原子核がもつ陽子の数を表しています。
今、原発事故に関する報道で、ヨウ素という言葉が盛んに使われていますが、ヨウ素は、I(アルファベットのI - アイ)で表されるので、ヨウ素の原子核は53個の陽子を持っていることになります。またセシウムは、CSで表されますから、セシウムの原子核は55個の陽子を持っています。

さて、ヨウ素の原子核は53個の陽子を持っている、セシウムの原子核は55個の陽子をもっているわけですが、それでは、ヨウ素やセシウムの原子核はいくつの中性子を持っているでしょうか?
実は、これが一定ではないんですね。
例えば水素、水素の原子番号は1ですから、水素の原子核が持つ陽子の数は1個になります。で、普通の水素の原子核は1個の陽子から出来ているのですが、ごくまれに、陽子1個+中性子1個という、持っている電荷の量は同じで、重さが2倍の物が自然界にもごくわずか0.015%程度含まれています。これは重い水素なので重水素(じゅうすいそ)といいます。また、水(H2O 水素原子2個と、酸素原子1個の結合ですよね)の、水素を重水素に置き換えた物を重い水ということで重水(じゅうすい)といいます。

天然水素は、この普通の水素と、重水素、そしてほんのごくごくわずか陽子1個+中性子2個の原子核をもつ物の混合体で出来ています。これらの原子を書き表す時、元素記号の左上にその原子の重さ(陽子と中性子の合計数)を書き加えて、それぞれの元素の違いを表します。例えば、普通の水素は陽子1個なので1H、重水素は陽子と中性子の2個なので、2H と書きます。
これらの中性子の数が違う元素は、化学的性質(例えば原子の結合 - 塩はNaCl ですから、Na-ナトリウム、Cl - 塩素の結合でできています。化学的性質とは、この組み合わせを作るパターンのことです)は、原子核の周りを回っている電子によって決まってきますから、同じになります。なので、これらの(原子核の重さが違う)原子のことを「同位体(どういたい)」と呼びます。

放射線

ヨウ素やセシウムみたいに、原子番号の大きな元素のなかには、中性子の数がまちまちな物が多数存在する場合があります。例えばセシウムですが、天然の物は1種類しか知られていませんが、こんなに多くの種類があります。いま、話題に上がっている、137CSですが、セシウムの原子番号は55ですから、陽子の数は55個。で、重さは137ですから、中性子の数は82(=137-55)という事になります。
さて、これらの同位体なんですが、原子核中の陽子の数と中性子の数の組み合わせで、居心地(ヲイヲイなんの居心地だい)が良い組み合わせと、居心地が悪いがあるんですね。居心地が良い場合には、その原子核はずーっとそのままの状態を保ちます。例えば、さっき出てきた、1Hや2H は、原子核の居心地が良いんでしょうね。ずーっとそのままの状態を保ちます。これを「安定同位体」と言います。
じゃあ、居心地が悪い場合にはどうなるの? ということですが、居心地が悪い場合、原子核は原子核の中の陽子や中性子をBAN(バン - セカンドライフ用語で、追放という意味です)して、居心地の良い状態になろうとしますw。これを原子核崩壊(げんしかくほうかい)といいます。
さて、原子核崩壊によって居心地の良くなった原子核はそれで「めでたし、めでたし」な訳ですが、問題は追放されちゃった方ですね。
居心地の悪い原子核から追放されるものには以下のパターンがあります。
・陽子2+中性子2(これヘリウムの原子核です)の組み合わせで追放する
・中性子を強引に陽子と電子に分けて、電子だけを追放する
・その他
なんてパターンですね。1つ目の追放パターンは、α(アルファ)崩壊って呼んでます。2つ目はβ-崩壊って呼んでます。
皆さん方は、放射線の中に、α線、β線なんて種類があるって、最近のテレビでの報道で知った人が多いと思いますが、実は、このα線、β線ってのは、α崩壊によって追放された陽子2+中性子2の組み合わせのことをα線、また、β-崩壊によって追放された電子をβ線と呼んでいるんですね。まあ、人間もコミュニティーから追放されると、やけになって暴れちゃう人がいますが、原子の世界でも、原子核というコミュニティーから追放されたものは、放射線になって、暴れちゃうわけです。

それから、もう1つγ(ガンマ)線という放射線の種類を聞いたことがある人もいるでしょう。このγ線はとりあえず、γ崩壊って名前がついている崩壊で出てくるものです。
ただγ崩壊は、α崩壊やβ崩壊と違って、具体的に原子核から追放される物がありません。では何かというと、α崩壊やβ崩壊がおこった後、原子核のエネルギーが過剰になって、それを電磁波(でんしは)という形で放出することを言います。まあ、人間の社会でも、追放とかあると残った人たちの間でもごたごたがありますよね。そのごたごたのエネルギーを、発散させることに相当します。

さて、電磁波なんて、難しい言葉をつかってしまいましたので、これを解説しておきましょう。実は電磁波ってのは、いわゆる電波のことです。まあ電気の波と思ってくれてOK。
波には、波長(はちょう)という物があります。波長とは波の1つの頂点(一番上)から、次の頂点までの距離のことなんですけど、これが数Kmから数センチまでの波を電波と呼んでます。で、もっと短く0.0000007m~0.0000004mあたりになると、これを(可視)光と言います。実は電波と光って同じモンだったんですね。で、もっと短くなるとγ線って事になります。実はレントゲン撮影で使われるX線も、γ線ほどじゃないけど、波長の短い電磁波です(ここらあたり参照)。
このγ線だけが、電気を帯びたちっちゃな粒ではありませんが、実は物質にγ線が入ってくると、その物質中の電子を蹴っ飛ばす性質があります。これをコンプトン効果って呼んでいるのですが、要はγ線が物質に入射すると、そのエネルギーの一部を電子に与え、電子が飛び出してくるんですね。ですからこれはβ線と同じ物になります。
最終的には、α、β、γ線(おもな放射線)は、電気を帯びたちっちゃな粒がすげえ勢いで飛んでいるもの(高速荷電粒子 - こうそくかでんりゅうし)だと、お分かりいただけたと思います。

放射線の人体への影響

さて、まだまだ解説したいことはあるのですが、放射線の人体への影響に解説を進めていきましょう。

この電気を帯びた粒、放出されるとどうなるかってことですけど、空中にボールを投げたのと同じように減速していきます。減速ってのは、どぉいうことかってのを、以下では物理的に考えてみたいと思います。動いている物は「運動エネルギー」ってエネルギーを持っている訳です。で、減速するってことは、その運動エネルギーを、周囲に落として行くって事なんですね。で、どんな感じで落としてゆくか・・・。身近な例で考えると、自動車のブレーキ、これは自動車の持っている運動エネルギーを、摩擦を使って熱に変えて落っことしてゆく。だから自動車は減速するし、ブレーキは発熱するわけです。

では、電気を帯びたちっちゃな粒は、どぉやって運動エネルギーを落っことして行くかって言うと、周囲の原子を、電離(でんり)するって方法で、運動エネルギーを落っことしてゆきます。電離ってのは、どぉいうことかって言うと、いわゆるイオン(って高校の化学やっているなら聞いたことありますよね)を強引に作っちゃうことです。
ここで問題となっちゃうのが、人間の細胞核にあるDNAに対する影響です。電気を帯びた粒が、高速でDNAの近くを通過すると、DNAが電離されて壊れてしまいます。これが放射線が人体に与える最大の問題です。どっかの人が「自民党をぶっ壊す」と行っていましたが、「放射線はDNAをぶっ壊す」わけです。

これが放射線が人体に影響を与える主な理由です。

人間の細胞には、自己修復機能があって、少しぐらいの細胞のDNAが壊れて細胞が死んでしまっても、細胞分裂によって修復されてゆきます。
ですが、大量に放射線を浴びて、死んじゃった細胞が多くなると、細胞でできた人間も、皮膚がやけどを負ったように様な状態になったり、浴びた量が多ければ死んでしまうことになります。これが放射線障害の中で「確定的影響」って言われている物になります。
それに対して、「確率的影響」と呼ばれているのは、DNAの機能が全く失われるほど壊れなかったけど、一部が壊れて壊れたまま細胞分裂が進んで、将来ガンなどにかかることを言います。

ちょいまとめ

ええと、ここまで呼んでいただければ、一番始めに示した資料(この資料)を読んで理解できるだけの最低限の知識を身につけたことになります。
ええと、この資料についても、解説が欲しいと言うことであれば、解説しちゃうかもしれません。
でも、かったるいかなw

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