2010年5月26日水曜日

低く深く、そして再起不能に

新学期も、たけなわの今日この頃です。先ほどネットワークという科目のテストをおこないました。問題はかるーくこんな感じ。

IPアドレス61.158.163.53、サブネットマスク255.255.128.0と設定されたホストがある。このホストが属するネットワークの次の値を答えよ。
(1) ルートアドレス
(2) ブロードキャストアドレス
(3) ネットワークのアドレス ○.○.○.○/○ 形式で
(4) IPアドレス数
(5) 接続可能ホスト数
ってな感じですね。

で、このテストの前には、こんなチャートを学生に配布して、解説を行っていました。
このチャート、上の左から、IPアドレスと、サブネットマスクを書き入れ、下にある10進数2進数変換表を使いながら下を埋めてゆけば、機械的にルートアドレスとブロードキャストアドレスが求まっちゃうチャートで、わたしが長いこと(2002年度〜)使っているものです。学生に聞いたら、論理ANDをやっていない(ほんとかよ!!!)ということなので、ANDの真理値表まで書いて解説しました。もちろん、順を追って、学生にこのチャートに数値を入れさせながら、使い方も解説したんですけどね。
昨年も同じチャートを使って、同じような問題を出して、2009年度の記録を見てみると、1問2点の配点で昨年は、平均点が6.93標準偏差が2.73でした(10点満点)。はぁ↓。
で、ですね。ええと、ことしの平均点と、標準偏差、何点だったと思います? ねえねえ何点だったと思います〜〜?

平均 3.00 点、標準偏差 2.70 最高点8点

去年と同じに教えたつもり何ですけど、これって私の教え方が悪いんでしょうねぇ。
で、まあ、0点の学生さんもたくさんいるんですけど、そのなかで一生懸命解こうとして力及ばずっていう学生さんは、良いんですけどね。全く解こうしていない、空欄空白の答案を出す学生さん、これが1/3ぐらいいてですね、まあ、全くわかんないのは、私の責任かなとも、思えなくない。
でも、「(A6版の)解答用紙を縦に使って、一番下に番号と名前、問題番号と解答だけを書いてね」と2度言っても、横に使って上に名前を書いて提出してくる学生さん(もちろん日本人です)が3人、これも、私の責任なんでしょうかねえぇ。

そりゃ、何も教えない状態で、このテストやったらしょうがないかなーって思います。でも、前の時間に同じ事をやって、数値を変えただけなのに・・・これはないでしょう。いや、私が悪いのか。
上2つの数値が1と1だったら1、それ以外だったら0、それがわかんなかったのね。
実際に何通りが、10進数←→2進数の変換表を使って(計算させた訳じゃないんですよ)変換をしてみたけど、それじゃわからなかったのね。
ネットワーク部はそのまま写し、ホスト部は全部1にするって日本語がわかんなかったのね、それじゃ英語で説明すれば良かったですね。
あー、どうせ、私が悪いんですよ。

ということで、私は、しずかに、そして低く、そして深く、再起不能になって行く訳です
これを読んで、可哀想だと思った人がいたら、コメントで慰めてください。そうしないと、沈没したままになっちゃうかもしれません

2010年5月15日土曜日

組込みシステム展の講師が終わった

ゴールデンウィーク明けから、なんとなく気が重いと思っていたら、「組み込みシステム展」の専門セミナーの講師を引き受けていることを思い出しました
この専門セミナー、セミナースライドの査読があるとか、わりとマジに話をしないといけないので、実は取っても苦手だったりします。しかも朝早いので、いつもと同じ時間に家を出なければならない
という訳で、行ってきましたよ。ショッカーの基地、もとい東京ビッグサイト



まあ、いつものことなんですが、湘南新宿ライン、普段は新宿まで乗るのですが、東京ビッグサイトに行くときには、大崎で東京臨海鉄道?のりんかい線に乗り換えです。で、また、これが混んでいて(笑。座れない。座れないと言うことは、予習ができない(おのれは、当日の朝、講義の予習をするんかい)
で、気が付けば、東京ビックサイトに着いていて(笑



講師控え室で「タバコ吸いたい」とだだをこね、喫煙所でタバコを吸いコーヒーを買って控え室に戻ると、坂上さん(私と組んで、「改善!テスト計画」の講座をやる方です。上の写真参照)がいらしていました。しばしAndroidのアプリケーションの話をしていると、時間になったので(笑、ぼちぼちと1時間15分、しゃべってきました
あ、わたしの講座なんて、実はたいしたことはなく、かつどうでも良くて、坂上さんの講座が取っても役に立つ(笑

たとえばですね。unsigned short int(2バイトの符号なし整数)の値の判定で、10以上20以下という条件判断を行うモジュールがあって、この条件で同値クラステスト(*1)を行うときに、どんなテストケースを作るかって問題があったとします
この場合、同値クラスを見つけるわけですが、10未満、10以上20未満、20より大きい、という3つの同値クラスがあることは、即分かるのですが、これらの同値クラスの代表値をどう選ぶか? って問題です
10未満の同値クラス、および10以上20未満の同値クラスでは、5と15あたりを選択しておけば無難なのですが、20より大きい同値クラスでの代表値の選び方が問題になります
坂上さんの話は、ここで50とか選んじゃいけないって話になるのですが、みなさん方、以下の中でどれを選んだら良いか、お分かりになりますか?

ア 21、イ 27、ウ 270、エ 65535

実は正解?はウの270なのですが、それではなんでこれが正解になるのでしょうか?

この理由を理解するためには、2バイト符号なし整数がメモリ上でどのように格納されているか理解する必要があります。分からない人は、以下の説明を「すげぇ、そんなことまで考えるの」と思いつつ読み飛ばしてください(大笑

実は、270という数値、下位1バイトに格納される値が、15なんです(上位の1バイトは1になります)。ですのでお馬鹿なコンパイラもしくは自分で書いたアセンブラ・プログラムで、数値の比較をするときに下位1バイトだけで判断しちゃうと、270という値は、10以上20以下の値と判断されてしまう可能性があります
ですので、この270という値をテストケースとして使うことによって、ちゃんと2バイトで比較をしていることの証明ができることになります
と、まあ、坂上さんの講演はこんな、「目から鱗の」話が多いので、毎年講師の役得として聞かせていただいているのですが、やっぱり現場のプロは違うなぁということです

で、講演の後、坂上さんに連れられて、日本システム開発さんのブースに立ち寄ったあと、会場をぶらぶらしてきました



もちろん、上の「VIP」の名札をフル活用して、いろんなブースでいろんなものをもらうのと同時に、VIPルームに置いてある飲み物を全て試飲するなど(笑、VIP風を吹かせながら、ぶらぶらしていました(大笑


(*1) 同値クラステスト
同値クラステストは、テストに使う入力値が同様の結果をもたらす場合、その入力値のグループを「同値」と呼び、その同値クラスの代表値でテストを行う(テストケースを作る)テスト技法です

2010年5月7日金曜日

じじいの戯言 ー 価値を創造しよう

じじいの戯言です

最近読み返した本に「大唐帝国」というのがあります。この本、タイトルは「大唐帝国」なのですが、漢末から唐の滅亡まで、中国の中世を概観する内容で、特に経済面で示唆に富んだ記述が多数あります
この本によれば、中世の中国は景気の底だったらしいのですが、それは中国の金が当時の先進国である西域との貿易によって、西域の進んだ製品を購入するために流出し、中国国内で極度の金不足に陥ったことが原因であると述べられています
要は、お金の循環が悪い訳ですから、有力者は一度金を手放すと、次にいつ金を入手することができるか、分からないので、極力お金を使わない生活を始める。そのため金は市場に出回らず有力者の元に死蔵されてしまい、なお一層、金の循環が悪くなるという、今で言うデフレ・スパイラルが中世の中国で発生したということです。もちろん、今の様に急激な変化ではなく数十年から数百年かけて徐々に発生した、ということが現代とは違います。まあ、詳細は「大唐帝国」をお読みになってください

さて、現在の日本、および世界の経済状況ですが、経済音痴の私にわかるように、目一杯不景気です。この不景気の原因を、中世中国の例で考える訳には、とうてい行かないのですが、私なりに考えることがあります
この世の中には、どんなメトリックス使えば良いのか、とんとわかりませんが、純価値の総量というものがあるように思うんです。ここで言う純価値とは企業会計などで使われる純資産とはまったく違うもので、例えば土地を例に取れば、土地は、住むことや物を生産するために必要なもので、それ自体が単独で価値を持つことがないって立場で考えています。ですから、わたしの考える土地の純価値というのは、現在の地価と比較してかなり低いです(笑
一方で、人間は、その行動によって純価値を作り出すことができる、唯一の存在であるわけで(何やら資本論みたいになって来てしまいましたが)、その作り出した純価値に応じて金を受け取ることができると考えています。ここで資本との関係を論じてしまうと、マルクス主義になってしまうのですが、頭の悪い私は、そこまで考えません(爆笑
私が論じるのは、見せかけの価値を作り出す行為の不当性についてです。例えば、金融商品にデリバディブというものがありますが、デリバティブは「実物商品・債権取引の相場変動によるリスクを回避するために開発された金融商品の総称」って解説があります。これ、ブラック-ショールズモデルという証券市場モデルにおいて、証券の価値を決める式があって。。。というところまでは、モデル論として一応納得できるところではあるわけです。しかし、それはモデル上の価値であって、実際の価値ではありません
しかし、そのモデル上の価値のみで、証券を売り買いすることで利益をあげる行為、これはとてつもなく危うい行為です。多くの人がブラック-ショールズモデルという証券市場モデルを信用している間は良いでしょう。ですが、その本質は多分、セカンドライフのリンデン・ドルより危うい。(詐欺だったらしい)円天(でしたっけ?)並の危うさです。なぜならば、証券モデル上の価値が実際の価値になってしまったのですから、その証券もデルを誰も信用しなくなったら、一巻の終わりです
90年代以降の、日本、および世界の金融機関は、このデリバディブ商品に飛びつきました。基本的に金融業は物を生産しません。ですから、金融業がこの世に生み出す価値は、お金のあるところから無いところに融通するという、流通業並のものでしかなかったのが、自らが都合良く(見せかけの)価値を作りだしてしまうことが、できるようになったからです
実際に純価値は増えていないのに、お金が儲かる。これはその反対側で、実際に価値を作り続けている人たちが、作った価値をかすめ取る行為に他なりません。まあ、強欲な金融・証券業の人たちは、結果として、やりすぎてしまいました。背後で、せっせと価値を作っていた人が作った価値、これを越えて(見せかけの)価値を増やし、それを実際のお金に変えてしまった結果が現状の不況です
これが、私が足りない頭で考えたこれまでのシナリオなのですが、多分、金融などについては、まったくの素人であるため、多くの誤謬を含んでいると思います。ちょっと考えても、実価値より見せかけの価値である貨幣が多いと言っているのに、なんでデフレになっているの?(*1) とかあります。まあ、このブログ・エントリは、このことを論じるものではありませんので、間違えがあれば、「やさしく」教えていただければ幸いです(笑

さて、本題に入りましょう。これらの過程において、何が問題になったかというと、物を作ること(価値を作ること)よりも、「おままごと」の方が儲かってしまうため、物作りが軽んじられ、実際に価値を持つ生産物に、正当な価格が付かなくなってしまったことが最大の問題だと思います。これまで物作りの現場は3Kなどと虐げられ、優秀な人材の流入も少なくなってしまいました。今、文科省が物作りに直結する「数学(算数)」、「理科」の授業時間を増やそうとしていますが、ありゃ馬鹿ですね。優秀な人材を物作りに呼び込みたければ、物作りでお金をたくさん稼げるようにすれば良いんです
さて、これが現状。この様な現状認識の元、旧世代の価値観を持つ私や、時代遅れの価値観を持つ2〜30歳台の人たち(はは、これ読んでいる人かな)に何ができるかということです。先にも述べたように、今の状況は実価値と比較して、見せかけの価値がものすごく大きな状態になってしまっています。2つの価値のバランスを取るためには、実価値を増やすか、見せかけの価値を減らすかのどちからになると思います。ここで私は実価値を増やすことが、現在物作りに携わっている者の本務だと思います。見せかけの価値を減らすのは金融などの人たちにやってもらいましょう(笑
私は、教員なので、よりたくさんの実価値を生み出すことができる人材の育成、これこそが本務になります。これを読んでくださる人の多くは、自分自身で実価値を生み出している方が多いのではないかと思います。そのような方は意識して品質の高い製品(がより実価値が高いって考えてます)を生産すること、特に、ソフトウエア技術に携わっている方は、意識して品質の高い製品を作っていただけると、直接的には不具合などによる損失も防げますので、世の中の実価値を多くすることができます。また、自分の行為が世の中の価値をより増やせる環境に移ることも、必要になるかもしれません
しばらくは辛い時代が続くような気もしますが、大きな問題から目をそらすことなく、目の前の問題を片付けてゆくことを続けて行く、これが私にできることなのでしょう

(*1) これに関しては、経済のことをまったく知らないド素人の考えで、絶対に間違っている様に思うのですが、実は見せかけの価値の実態の多くは借金であるという回答を考えたのですが・・・経済の初歩を知らない、ド素人の戯言です