2011年3月31日木曜日

やることはいっぱいあるのに

やることはいっぱいあるのに、逃避を続けているこすげです。

さて、原子炉の中で生まれる元素についての話をば・・・

235Uの原子核に中性子をぶつけてみると

このシリーズの1回目2回目では、235Uの原子核に中性子をぶつけると、その中性子が原子核にいったん吸収され、原子核の重さがその中性子分増えることで、235U が 236U になって、この原子核が居心地が悪いので分裂しちゃうぜ、って話をしたわけです。
で、どう分裂するかって言うと、2回目では、「92Kr と 141Ba、そして2個の中性子に分裂します」って書きました。でも実はですね、この2つに分裂するとは限らないんです。じゃあ、どのように分裂するかというと、ある範囲の元素に分裂することは確かなんだけど、どれになるかは確率的にしか分からないってことになります。どの元素にどのくらいの割合で分裂するかってのは、「核分裂物質収率」って名前のデータになっていますが、ここを見てもらうとその具体的な値がわかります。
上の資料では、図1と図2の2つグラフがありますが、横軸が分裂した後の元素の質量数(原子核に含まれる陽子と中性子の数の合計)を表しています。また縦軸が確率ですが、グラフの線が上にあるものほど良くできるって解釈してくれてOKですね。
図1と図2の違いは、図1が235Uの原子核に弾丸としてぶつける中性子の速度(=エネルギー)が160MeV(メガ・エレクトロンボルト これって結構速い - エネルギーが高い )の場合で、図2は、弾丸としてぶつける中性子の速度が低い(熱中性子ってのは中性子弾丸がかなり低いというが、人間で言うと「お酒に酔ってふらついている」状態の中性子)場合です。
こんな感じで、弾丸とする中性子の速度(エネルギー)によっても、どんな風に分裂するかの確率が違います。


ちょい確率について


ええと、確率って分かりにくいってよく言われますので、ちょい横道にそれますが解説を。
一番身近な確率って、多分「降水確率」じゃないでしょうか。これ結構誤解されていてですね。降水確率が10%だと「雨は降らない」、逆に降水確率「90%」だと「雨は降る」って思っちゃいます。で、降水確率が10%の時に雨が降ると「天気予報は当たらない」なんて怒ったりするわけですが、実は「怒るのはちょっと待ってね」ってことなんです。
実は、この降水確率10%を正しく評価するには、「過去10回、降水確率10%の予報を出したときに、10回の10%である1回、雨が降ったかどうか」という事を調べなければいけません。
気象庁が過去何回「降水確率10%」の予報を出したか分かりませんが、例えば1000回「降水確率10%」の予報を出したとすると、実際に100回前後、雨が降っていたら「おお立派」って事になる訳です。100回からかなりずれていたときに「国民の税金を使ってスパコン作って、それで計算してんのに、何を予報してんじゃ、ワレ!、仕分けされて当然だな」って怒ってもOKなんですね。
このことって、ちゃんと勉強していればわかることなんですけど、僕も含めてなんか「頭では分かっていても、身体が納得してない」ってことなんですけどね。実は、このブログを書くに当たって気象庁のWebページで、天気予報検証データを探したら、ここにありました。
ええと、このデータから、わかりやすく、0%~100%の降水確率を出したときに、実際にはどんな割合で雨が降ったのか? ってデータは「降水確率予報の検証結果(2010/9~2010/11のデータ)」って名前で公表されてました。見ていただければ分かりますが、思ったよりいい線行ってますが、降水確率が低いときには実際の確率は低め(雨が降らなかったことが多い)で、降水確率が高いときには高め(雨が降ったことが多い)みたいです。
しかし、このデータって報道されないなぁ。。。せっかく、国民みんなに確率現象ってどんなものなのか理解してもらうための良い例なのに。。。まあ、マスコミ自身が分かってないのかもしれないけどなぁ。。。
スパコンの仕分けでもねぇ。。。ちゃんとこんな実績データを元に話をしたんだろうか・・・「普通は割と良く当たっているけど、台風とか災害時の的中率がわりーから、もうちょい性能の高いスパコン作った方がいいよねー」とか、「天気予報があたらねぇと、こんだけの経済損失がでちゃうから、こんだけ税金突っ込んでも、○年で元とれるよねー」とか。。。ぶつぶつ。。。
「降水確率なんてもんが使われるようになったときに、確率現象ってものを国民に理解してもうチャーンスって、なぜ国民の知恵の総量に責任を持つ文科省の役人なんかがおもわねーのか」とか、それをやろうとしても、「予算を取って、どっかの天下り財団法人に小冊子見たいなものを作らせて、それでオッケーだよね」で済んじゃうんだろうなぁ。。。とか。。。あー、愚痴が止まらん(笑。
で、話を戻すと、235Uに中性子をぶつけて分裂した結果は、確率的にいろんなもんができるって事なんですね。これが、ここでの結論(笑)。

核分裂してできた元素の行く末

さて、かなり長い愚痴を書いてしまいましたが、235Uに中性子をぶつけて分裂した元素はいろんな物ができますが、それらの元素の原子核は、このブログの言い方では居心地のよい状態にはなっていません。なので、様々な崩壊を繰り返して、居心地のよい状態になろうとします。
原子核分裂によってある原子核ができたとき、それらの多くの種類の原子核は、3~4回Β崩壊を行って、居心地のよい状態にたどり着きます。それをちょっと専門的に書くと以下のようになります。

原子核1 ー(崩壊)→ 原子核2 ー(崩壊)→ 原子核3 ー(崩壊)→ 原子核4

こんな感じで、最終的には居心地のよい原子核4になるのですが、崩壊を起こすごとに、放射線を出してくれちゃう訳です。この連鎖を専門用語ではフィッション・チェーンって言います。あ、もちろん、上の例では3回の崩壊で居心地のよい状態になっていますが、どんな崩壊を何回繰り返すかは、核分裂によってできた原子核1が何かってことで決まります。

半減期

さて、崩壊を起こし(ついでに放射線をまき散らせて)て原子核は居心地の良い状態になっていくわけですが、崩壊ってどんなタイミングで起こるのでしょうか。
実は、崩壊するまで時間は、原子核の居心地の悪さ具合で決まります。居心地がすげぇ悪ければ早く崩壊しちゃうし、それほどでもない場合にはそこそこ時間が経った後崩壊するんですね。
で、ここで重要なのが、崩壊ってのが前に説明した降水確率と同じ確率現象だってことなんです。ある原子核が崩壊を起こして次の原子核に変化するタイミングは、その原子核すべてが同じタイミングで崩壊するのではありません。居心地の悪い原子核は、確かに早めに崩壊しますが、居心地が悪くても我慢してなかなか崩壊しない原子核もあるんですね。このあたりは、擬人化すると、人のできたやさしい陽子や中性子ばかりの原子核と、喧嘩っ早い陽子や中性子が多い原子核とでは、居心地が悪い状態を我慢できる時間が違って、それぞれ我慢の限界に達すると崩壊するって理解でOKだと思います。
そこで崩壊するタイミングは、半減期という時間で表すことになっています。半減期というのは、元あった原子核が半分になるまでの時間です。じゃあ、半減期の2倍の時間がたつと、元あった原子核は0になるの? って誤解しちゃいそうですが、実はこれ、確率現象なんで、半減期の2杯の時間がたつと、元あった原子核の数は0にはならず1/4になります。言い方を変えれば、半減期の10倍の時間がたっても、崩壊しない奴は崩壊しない、ただその数は、(1/2)10 = 1/1024になります。大体元の元素が1000個あったら、半減期の10倍の時間がたっても、1個弱崩壊しないで残っているって計算になります。我慢強い陽子や中性子もいるってことですね(笑)。

原子炉の燃え残りカス

さて、原子核の半減期ですが、核分裂後の原子核の半減期は、ものすごい様々で、ミリ秒(1/1000秒)から、17000000年以上なんて奴もいます。これらの中で、問題になるのは、長い半減期をもつ原子核です。簡単にいうと、いつまで待っても減ってくれないわけですから。具体的には129I → 17,000,000年、107Pb → 7,000,000年、135Cs → 2,000,000年なんてのが、長寿命な原子核の代表選手です。

つかれたので、続きは次回ということにします。次回は具体的に原子炉のどこにどんな元素がどんな期間溜まるかって話になります。で、ここから先は物理学の話ではなく、原子炉工学の話になります。

2011年3月30日水曜日

放射線をさえぎる

昨日はつまんないことのためにブログを更新できませんでした。今日は、放射線をさえぎる話をしてみたいと思います。

人生いろいろ、放射線もいろいろ

前回までの話で放射線には、α線、Β線、γ線なんて種類があるという話をしました。ええと、α線とβ線電気を帯びた粒が高速にとんでくるもの、γ線は極めて波長の短い(エネルギーの高い)電波という事でしたね。実は原子炉ではこれらの放射線の他、中性子線というのも使われています。
原子核分裂の説明で出てきたのですが、ウランやプルトニウムを分裂させる弾丸として使われるものです。これも放射線の一種類に数えれば、放射線のタイプは以下の3種類になります
  • 電気を帯びたちっちゃな粒が高速でとんでくるもの(α、Β線)
  • 波長の短い電波(γ線)
  • 電気を帯びてないちっちゃな粒が高速でとんでくるもの(中性子線)
これらの中で、電気を帯びたちっちゃな粒、これをさえぎるのは比較的容易です。なぜならば、これらは盛大にエネルギーを落としながら飛んでくるので、空気でもさえぎることができてしまいます。
具体的には238Uの出すα線の場合、空気中で10cmで止まりますし、232Thが出すβ線は空気中で2.6m、アルミニウムの板を使えば4mmの厚さで、ほぼさえぎることができます。ですから放射線を出す放射性元素がある場所のすぐ近くに行くとか、放射性元素を体内に取り込まない限り、そんなに気にしなくて良いと言っても良いです。

次に波長の短い電波、これはちょいと厄介です。このタイプの放射線は電波である間はあまり人間に悪さをしません。ただ、何か物質に入射して、そこで電子を蹴っ飛ばし(コンプトン効果)、その電子が悪さをするタイプだからです。電波をさえぎるには原子番号の大きな重い元素が効率的です。前々回に示した周期表を見てみると、原子番号82のPb(鉛)が原子番号が大きく安価な材料です。もちろん鉛より重い元素を使えば、より効率よくγ線をさえぎることができますが、鉛より重い元素は高価であったりそれ自身が放射能を持つなど、問題がありますので、一般にγ線をさえぎるには鉛が使われます。
また、電気を帯びたちっちゃな粒と違って電波系(笑)の放射線は、コンプトン効果によって電子を蹴っ飛ばせばエネルギーが減少しますが、電子を蹴っ飛ばさないまま鉛を通り抜けちゃう場合もあり、その場合にはエネルギーは減少しません。なので、どれだけの厚さを持つ鉛の板で完全に遮蔽することができるかという数値を示すことができません。示すことができる数値は、元の強さの半分になるとか、1/10になるって厚さです。で、実際はどうなのかというと、40Kが出すγ線の場合、空気だと半分にするには大体110m、1/10にするには大体370m必要です。また鉛の場合には半分にするには大体1.2cm、1/10にするには大体4cmの厚さが必要なります(参考:放射性鉱物の取扱いと保管)。


最後に中性子ですが、こいつが一番厄介な相手です。中性子は電気を帯びていませんが、水素の原子核などに衝突すると、そいつを跳ね飛ばして陽子線という放射線を作り出します。また中性子自体は電気を帯びていないので、物質中を通過しても素通りしてしまい、電離作用などでエネルギーを落としてくれません。「なんだ、陽子線か、、、電気を帯びた粒なんだからβ線とほぼ同じでしょ、なら鉛の板で充分防げるじゃん」って思うかもしれませんが、問題は水素がどこにあるかって問題です。私たちの身の回りで、大量に水素がどこにあるかって言うと、実は私たち自身の身体なんですね!。私たちの身体のかなりの部分は水、すなわちH2Oで、できています。中性子は家の壁や、鉛の防護服をやすやすと素通りして、人体中に含まれる水の水素原子と衝突して、体内で陽子線を作り出しちゃうんです。ええと、中性子爆弾って聞いたことあるでしょうか? 中性子爆弾ってのは核兵器の一種なのですが、普通の核兵器と違って中性子をたくさん出すタイプの爆弾です。この中性子爆弾の爆風などは抑えてあるので、そんなに強くありません。ですが、水を含んだ生命体には致命的な影響を与えるんですね。いわば建物などにはあまり被害を与えず、人間(まあ、動物や植物も)を選択的に殺しちゃう兵器なのですが、それができるのは、この中性子の性質によるものです。
それでは、この中性子をさえぎるにはどうしたらいいでしょうか? 実は、中性子を防ぐ能力が高く安価なものは「水」です。それはどうしてか、以下で考えてみましょう。
まず、パチンコ玉を中性子としましょう。このパチンコ玉(中性子)を思いっきり、ボーリングの玉が並んでいる中に投げ入れることを想像してください。ここでボーリングの玉は鉛などの重い元素の原子核に相当します。当然、投げ入れられたパチンコ玉はボーリング玉に当たりますが、勢いをあまりそがれないまま跳ね返ってしまうでしょう。ですので、鉛など重い元素では中性子の持っているエネルギーを効率良く奪うことはできません。
では、次にパチンコ玉を思いっきり、ピンポンの玉が並んでいる中に投げ入れることを想像します。ここでポンポン玉は電子に相当します。当然、投げ入れられたパチンコ玉は、ピンポン玉と衝突しますが、ピンポン玉はかなりの勢いで跳ね飛ばされるでしょうが、ピンポン玉自体は軽いので、パチンコ玉の持っているエネルギーを効率良く奪うことはできません。
じゃあ、最後に、パチンコ玉を思いっきり、ほぼ同じ重さのパチンコの玉が並んでいる中に投げ入れることを想像します。このとき、投げ入れられたパチンコ玉は、他のパチンコ玉と衝突するごとに、自分の持っているエネルギーの半分を衝突相手に渡し、効率よくエネルギーを失ってゆきます。
なので、中性子をさえぎるには、水素をたくさん含んだ「水」が安価でもっとも効率のよいものになります。また、水素を多く含むパラフィン(CnH2n+2)も中性子の防護材として有効な物質です。
ただ、このやっかいな中性子でも、空気中を何Kmも飛ぶことは考えられません。


防護の基本は、放射線源から離れること


さて、それでは、原発からの放射線から身を守るために一番いいことは何か? というと、「放射線源から離れる」こと、その事にまさる防護策はありません。では、どのくらい離れれば良いのかというと、まあ数Kmも離れれば、よっぽど強い放射線源(例えば核兵器)でない限り大丈夫でしょう。
それでは「何で福島原発では、周囲数十Kmの範囲で避難指示や勧告が出ているの?」かというと、実は、放射線源、すなわち放射性元素が原発から出て周囲に飛び散っちゃっているからなんですね。これでは、人間がいくら原発から離れても、放射性元素が追っかけてくるわけですから、意味はありません。
原発から、数十Km以上離れたところから放射線が検出されるということは、原発から大量の放射線が出ているのではなく、(多分原発由来の)放射性元素がそこまで飛んできているということを意味します。


次回は、原発で生まれる放射性元素って、テーマで書くことにします。

2011年3月28日月曜日

原子力発電と放射能

「原子力発電所から、放射線が出てくる」 これって割と当たり前の事なんですけど、これをちゃんと説明してみましょう

特殊相対性理論

アインシュタインが導いた相対論っていうと、時間が短くなったり、重さが重くなったり、それからブラックホールなんてのを思い出す人が多いと思いますが、実は原発から放射能が出てくる説明には欠かせない物になります。相対論は、特殊相対論と一般相対論って2つに分かれますが、原発の原理は特殊相対論の範疇になります。一般相対論は重力に関する理論で、ブラックホールなんかはこっちになりますが、とりあえず原発には関係ありません。

さて、この特殊相対論なんですが、正の重さ(質量 - しつりょう)を持ったものは、どんなにがんばっても光の速度に達することはできないことになっています。

さて、ここで物体にエネルギーを与えて、速度を上げることを考えてみましょう。より具体的には、自動車でエンジンをぶんぶん回すことで、自動車にエネルギーを与えると、自動車の速度が上がってゆくってイメージを持ってもらえると、良いかもしれません。
実際には車の場合、エンジンが作り出すエネルギーと、車の(空気や地面との)摩擦で失われるエネルギーが釣り合うところまでしか、速度を上げることができませんが、摩擦で失われるエネルギーがないとすると、車はどんどん速度を上げてゆきます。

(これ以降、わかりやすくするために、運動エネルギーと運動量をわざと区別しないで説明に使っています)

バイクの場合ですけど、最大で大体0.3Gぐらいで加速するそうです。1G≒9.8m/s2なので、1秒間にだいたい、3m/s、時速にしておおざっぱに言って、1秒あたり10Km/hほど速度が上がってゆきます。
一方、光の速度は、だいたい秒速30,000Km/s なので、一切の抵抗がないところで、1千万秒(およそ115日)ほど(計算間違えがあったらご容赦)、エンジンをふかし続ければ、バイクは光の速度に達しそうです。ですが、残念なことに、計算通りには行きません。光の速度に近づくに従って、同じようにエンジンをふかしても、速度は思ったようには上がってゆきません。エンジンをふかしてエネルギーを与えても、思ったように速度が上がってくれないんですね。
皆さん方は、中学校か、高等学校で、エネルギー保存則ってのを勉強したのを憶えていると思います。光の速度に近い速度で動いている物に対しても、エネルギー保存則は成り立ちます。じゃ、なんで、エネルギーを与え続けているのに、速度が上がらないか・・・。そこが最大の問題になります。

物体の持つエネルギーは、速度が速いほど、また物体の持つ重さ(質量)が大きいほど、大きくなります。ある物体にエネルギーを与え続けエネルギーが増えているのに、速度が上がらないってことは、どう考えたら良いのかというと、単純に「じゃ、重さが重くなってんでね?」と考えると幸せになれます。すなわち「エネルギーを与え続けると重くなる」「エネルギーと重さ(質量)は似たようなもん」って結論が導かれます。これが有名な、

E = mc2 (E:エネルギー、m:質量、c:光速度)

って式の(かなり嘘も含んだ)簡単な説明です。

核分裂

さて、ちょっと回り道をしましたが、原子力に話を戻してゆきましょう。
核分裂というのは、原子核が分裂して2つ以上に分かれることです。で、分裂した破片を集めてきて重さをはかると、元の原子核の重さにはなりません。ちょっぴり軽くなってます。実はこの軽くなった分が、核分裂時に熱エネルギーとして出てゆきます。この軽くなる重さはすげぇすくないのですが、先の「E = mc2」って式に当てはめると、cは光の速度はかなりでかいので、結構なエネルギーが熱として出て行っていることが分かります。この熱エネルギーを利用して発電を行っているのが、原子力発電ということになります。
この核分裂は勝手に起ることもあります。例えば252Cfって言う原子は、ほぉっておいても自分で勝手に核分裂してしまいます。これを自発核分裂と言いますが、核分裂を利用して効率よく熱エネルギーを取り出すには、核分裂をコントロールした方が都合がよろしいわけです。

では、どぉやって核分裂をコントロールするかと言うと、それに都合の良い元素があるんですね。例えば、235U(ウラン235)。こいつは、天然のウランの中で、0.7204%しか存在してませんが、中性子っていう弾丸をぶつけてやると、その中性子が原子核に吸収され、236Uになります。ですが、この236Uはものすごく不安定(前ブログのエントリーでは居心地がわるいって表現しています)なので、92Kr と 141Ba、そして2個の中性子に分裂します。このときに、重さがちょっぴり軽くなって、その分が熱エネルギーとして取り出されるわけです。

ところが、ここで問題が発生します。236Uが分裂してできた92Kr と 141Baも、実はかなり不安定な元素で、これ自身も前ブログのエントリーで説明した、(おもに)β崩壊を何回か繰り返して安定な元素になろうとします。そしてその過程でβ線を放出します。ついでにγ崩壊も起ってγ線もだしちゃいます。

実は、弾丸役の中性子も放射線の1つですし、核分裂後の元素もβ崩壊を繰り返してβ線、γ線を放出する、これが原発から放射線が出てくる理由です。

うーん、明日は出勤なので、今日はこれまでということで。。。暇があったら明日以降も続きを書くかもしれません。

放射線の話 ~実装の問題ではないが~

福島第一原発の事故で、放射能(放射線)に関する質問が、なぜか多く寄せられています。

この資料は一般の方が見て、即理解できるものではありませんが正確な記述なので、ぜひ参照していただきたい物の1つです。で、この資料の補足をしてみようと思います。

同位体の話

この世のすべての物質は、元素から出来ています。ここで、元素と言いましたが、正確には原子(げんし)と言います。あまり正確な表現ではないのですが、原子は、中心にプラスの電気を帯びている原子核(げんしかく)があり、その周りをマイナスの電気を帯びている電子(でんし)が回っていると考えて、大きな問題はありません。

そして、中心にある原子核ですが、これは、プラスの電気を帯びている陽子(ようし)と、電気を帯びていない中性子(ちゅうせいし)が、結合したものです。例えば、ヘリウム(飛行船や屋台の風船に使われている軽い気体です)の原子核の多くは、2個の陽子と、2個の中性子が結合した物になります。
ここで、陽子の持っているプラスの電気の量(電荷と言います)と、電子の持っているマイナスの電荷は、プラスとマイナスの符合が違うだけで、大体同じ量を持っているんですね。
それから、重さについてですが、陽子の重さ(1.67262158×10-27Kg = 0.00000000000000000000000000167262158 Kg)と中性子の重さ(1.67492721 ×10-27kg)はほぼ同じです。それに対して電子の重さ(9.10938188×10-31Kg)は、かなり軽く陽子や中性子の1/1000以下です。

ヘリウムの原子核は2個の陽子をもっているので、それと釣り合うようにヘリウムの原子核の周りには、2個の電子が回っています。
皆様方は、原子番号というのを聞いたことがあるでしょうか? 現在発見されている元素の一覧表は、周期表という名前で図にされていますが、この表で一番左上にあるH(これは水素のこと-すいそ)の文字の上に1、一番右上にあるHe(これはヘリウムのこと)の上には2と書かれていますが、これが原子番号と呼ばれているもので、その原子の原子核がもつ陽子の数を表しています。
今、原発事故に関する報道で、ヨウ素という言葉が盛んに使われていますが、ヨウ素は、I(アルファベットのI - アイ)で表されるので、ヨウ素の原子核は53個の陽子を持っていることになります。またセシウムは、CSで表されますから、セシウムの原子核は55個の陽子を持っています。

さて、ヨウ素の原子核は53個の陽子を持っている、セシウムの原子核は55個の陽子をもっているわけですが、それでは、ヨウ素やセシウムの原子核はいくつの中性子を持っているでしょうか?
実は、これが一定ではないんですね。
例えば水素、水素の原子番号は1ですから、水素の原子核が持つ陽子の数は1個になります。で、普通の水素の原子核は1個の陽子から出来ているのですが、ごくまれに、陽子1個+中性子1個という、持っている電荷の量は同じで、重さが2倍の物が自然界にもごくわずか0.015%程度含まれています。これは重い水素なので重水素(じゅうすいそ)といいます。また、水(H2O 水素原子2個と、酸素原子1個の結合ですよね)の、水素を重水素に置き換えた物を重い水ということで重水(じゅうすい)といいます。

天然水素は、この普通の水素と、重水素、そしてほんのごくごくわずか陽子1個+中性子2個の原子核をもつ物の混合体で出来ています。これらの原子を書き表す時、元素記号の左上にその原子の重さ(陽子と中性子の合計数)を書き加えて、それぞれの元素の違いを表します。例えば、普通の水素は陽子1個なので1H、重水素は陽子と中性子の2個なので、2H と書きます。
これらの中性子の数が違う元素は、化学的性質(例えば原子の結合 - 塩はNaCl ですから、Na-ナトリウム、Cl - 塩素の結合でできています。化学的性質とは、この組み合わせを作るパターンのことです)は、原子核の周りを回っている電子によって決まってきますから、同じになります。なので、これらの(原子核の重さが違う)原子のことを「同位体(どういたい)」と呼びます。

放射線

ヨウ素やセシウムみたいに、原子番号の大きな元素のなかには、中性子の数がまちまちな物が多数存在する場合があります。例えばセシウムですが、天然の物は1種類しか知られていませんが、こんなに多くの種類があります。いま、話題に上がっている、137CSですが、セシウムの原子番号は55ですから、陽子の数は55個。で、重さは137ですから、中性子の数は82(=137-55)という事になります。
さて、これらの同位体なんですが、原子核中の陽子の数と中性子の数の組み合わせで、居心地(ヲイヲイなんの居心地だい)が良い組み合わせと、居心地が悪いがあるんですね。居心地が良い場合には、その原子核はずーっとそのままの状態を保ちます。例えば、さっき出てきた、1Hや2H は、原子核の居心地が良いんでしょうね。ずーっとそのままの状態を保ちます。これを「安定同位体」と言います。
じゃあ、居心地が悪い場合にはどうなるの? ということですが、居心地が悪い場合、原子核は原子核の中の陽子や中性子をBAN(バン - セカンドライフ用語で、追放という意味です)して、居心地の良い状態になろうとしますw。これを原子核崩壊(げんしかくほうかい)といいます。
さて、原子核崩壊によって居心地の良くなった原子核はそれで「めでたし、めでたし」な訳ですが、問題は追放されちゃった方ですね。
居心地の悪い原子核から追放されるものには以下のパターンがあります。
・陽子2+中性子2(これヘリウムの原子核です)の組み合わせで追放する
・中性子を強引に陽子と電子に分けて、電子だけを追放する
・その他
なんてパターンですね。1つ目の追放パターンは、α(アルファ)崩壊って呼んでます。2つ目はβ-崩壊って呼んでます。
皆さん方は、放射線の中に、α線、β線なんて種類があるって、最近のテレビでの報道で知った人が多いと思いますが、実は、このα線、β線ってのは、α崩壊によって追放された陽子2+中性子2の組み合わせのことをα線、また、β-崩壊によって追放された電子をβ線と呼んでいるんですね。まあ、人間もコミュニティーから追放されると、やけになって暴れちゃう人がいますが、原子の世界でも、原子核というコミュニティーから追放されたものは、放射線になって、暴れちゃうわけです。

それから、もう1つγ(ガンマ)線という放射線の種類を聞いたことがある人もいるでしょう。このγ線はとりあえず、γ崩壊って名前がついている崩壊で出てくるものです。
ただγ崩壊は、α崩壊やβ崩壊と違って、具体的に原子核から追放される物がありません。では何かというと、α崩壊やβ崩壊がおこった後、原子核のエネルギーが過剰になって、それを電磁波(でんしは)という形で放出することを言います。まあ、人間の社会でも、追放とかあると残った人たちの間でもごたごたがありますよね。そのごたごたのエネルギーを、発散させることに相当します。

さて、電磁波なんて、難しい言葉をつかってしまいましたので、これを解説しておきましょう。実は電磁波ってのは、いわゆる電波のことです。まあ電気の波と思ってくれてOK。
波には、波長(はちょう)という物があります。波長とは波の1つの頂点(一番上)から、次の頂点までの距離のことなんですけど、これが数Kmから数センチまでの波を電波と呼んでます。で、もっと短く0.0000007m~0.0000004mあたりになると、これを(可視)光と言います。実は電波と光って同じモンだったんですね。で、もっと短くなるとγ線って事になります。実はレントゲン撮影で使われるX線も、γ線ほどじゃないけど、波長の短い電磁波です(ここらあたり参照)。
このγ線だけが、電気を帯びたちっちゃな粒ではありませんが、実は物質にγ線が入ってくると、その物質中の電子を蹴っ飛ばす性質があります。これをコンプトン効果って呼んでいるのですが、要はγ線が物質に入射すると、そのエネルギーの一部を電子に与え、電子が飛び出してくるんですね。ですからこれはβ線と同じ物になります。
最終的には、α、β、γ線(おもな放射線)は、電気を帯びたちっちゃな粒がすげえ勢いで飛んでいるもの(高速荷電粒子 - こうそくかでんりゅうし)だと、お分かりいただけたと思います。

放射線の人体への影響

さて、まだまだ解説したいことはあるのですが、放射線の人体への影響に解説を進めていきましょう。

この電気を帯びた粒、放出されるとどうなるかってことですけど、空中にボールを投げたのと同じように減速していきます。減速ってのは、どぉいうことかってのを、以下では物理的に考えてみたいと思います。動いている物は「運動エネルギー」ってエネルギーを持っている訳です。で、減速するってことは、その運動エネルギーを、周囲に落として行くって事なんですね。で、どんな感じで落としてゆくか・・・。身近な例で考えると、自動車のブレーキ、これは自動車の持っている運動エネルギーを、摩擦を使って熱に変えて落っことしてゆく。だから自動車は減速するし、ブレーキは発熱するわけです。

では、電気を帯びたちっちゃな粒は、どぉやって運動エネルギーを落っことして行くかって言うと、周囲の原子を、電離(でんり)するって方法で、運動エネルギーを落っことしてゆきます。電離ってのは、どぉいうことかって言うと、いわゆるイオン(って高校の化学やっているなら聞いたことありますよね)を強引に作っちゃうことです。
ここで問題となっちゃうのが、人間の細胞核にあるDNAに対する影響です。電気を帯びた粒が、高速でDNAの近くを通過すると、DNAが電離されて壊れてしまいます。これが放射線が人体に与える最大の問題です。どっかの人が「自民党をぶっ壊す」と行っていましたが、「放射線はDNAをぶっ壊す」わけです。

これが放射線が人体に影響を与える主な理由です。

人間の細胞には、自己修復機能があって、少しぐらいの細胞のDNAが壊れて細胞が死んでしまっても、細胞分裂によって修復されてゆきます。
ですが、大量に放射線を浴びて、死んじゃった細胞が多くなると、細胞でできた人間も、皮膚がやけどを負ったように様な状態になったり、浴びた量が多ければ死んでしまうことになります。これが放射線障害の中で「確定的影響」って言われている物になります。
それに対して、「確率的影響」と呼ばれているのは、DNAの機能が全く失われるほど壊れなかったけど、一部が壊れて壊れたまま細胞分裂が進んで、将来ガンなどにかかることを言います。

ちょいまとめ

ええと、ここまで呼んでいただければ、一番始めに示した資料(この資料)を読んで理解できるだけの最低限の知識を身につけたことになります。
ええと、この資料についても、解説が欲しいと言うことであれば、解説しちゃうかもしれません。
でも、かったるいかなw