2011年4月1日金曜日

与太話

ちょいとインターミッション

あるところで
「マクスウェルは、どうやって光速度不変を予言できたんですか?」
という質問?を聞きました。僕は予言なんかしていねぇと思うけどって答えたんですけど、
「マクスウェルが、光速度不変を、方程式から導いたと、最近聞いた。」
「それを再発見したのがアインシュタインなので、」
って言うんですね。で、それをテレビで聞いたと・・・。で、そこにトンデモさんがいて話に火を注ぐわけです。

うーん、こりゃいかん。

僕はそりゃないでしょ、って思ったのですが、残念ながら相対論から離れて20年以上、すぐにはちゃんと解説できる自信がなかったんで、保留にしたんですが・・・、で、以下がその保留にした僕なりの解凍です。

まず、光速度不変の原理とは、「真空中の光の速さは、光源の運動状態に影響されない」という原理です。
一方マックスウェルの方程式ってのは、


って4つの式からなる、電磁気学に関する法則です。そしてアインシュタインの特殊相対性理論以前に発表されている法則です。そして確かに電磁波の速度cを求めることは可能です。
しかし、そのことを持ってして、「マックスウェルが(アインシュタインに先立って)光速度不変を予言してたか」、「アインシュタインは(マックスウェルを)ぱくったのか」(←これは質問された方の発言ではなく、その場に居合わせたトンデモさんの発言ですが・・・)と言われると、「違う」というのが僕の考えです。

それを以下で説明したいと思います。

マックスウェルの方程式から電磁波の速度を求めることが可能であることは、先にも述べましたがが、マックスウェル自身はそのことに戸惑っていたと思われるのですね。
それはなぜかというと、電磁波というように光は波と考えられていたのですが、波が存在するためには、その波を伝える物質が必要になります。例えば「音」は空気が波を伝える物質になります。空気がないところでは、音は伝わりません。
なので、電磁波(光)が波である以上、電磁波(波)を伝える物質があるに違いないという推測が成り立ちます。そこで当時のその電磁波(波)を伝える物質の捜索が大々的に行われていました。
また、マックスウェルの方程式で導かれた電磁波(光)の速度は、誰から見た速度なのかという問題も出てきます。

いま、ある観測者に固定された慣性系からみて、光源がある速度vで動いているとしたら、観測者が観測する電磁波(光の速度は、光速度をcとすると、c+v または c-vになりマックスウェルの法則が成り立たなくなってしまいます。
そこで、無数に考えることができる慣性系のうち、マックスウェルの法則が厳密に成り立つ(光速度がcとなる)慣性系を「絶対慣性系」と名付け、その慣性系と地球との相対速度を観測してやろうという動きが出てきました。
そのなかで一番有名な実験が「マイケルソン・モーレイの実験」なのですが、その結果は、頸をかしげたくなる物だったのです。「マイケルソン・モーレイの実験」では、「絶対慣性系」と地球の相対速度は限りなく0だったんです。要は、どっち向きの光の速度を測定しても同じだという結果が得られました。

そこで、この現象の説明が数々考えられたのですが、それが有名な「ローレンツの収縮仮説」というものです。これは、絶対慣性系に対して物体が運動している時、その運動方向に向かって物質が収縮するという仮説で、この仮説を認めれば光の速度の観測から「絶対慣性系」と地球の相対速度の測定ができないという説明になります。

すなわち、マックスウェルをはじめとする、アインシュタインの特殊相対性理論以前の学者は、エーテルの存在を信じ、光速度が一定ではないのに一定として測定される矛盾を如何に説明するか、という立場に立っていたのだと思われます。

これでは、「光速度一定を予言したことにはならない」です。事実を知っていたとしても、その意味に気づかなかったのでは、意味がない・・・と、僕は思いますし、現代の物理学も、僕と同じように考えると思います。

さて、このことで実は僕は、すげぇ腹が立ったんですね。それは間違った認識を持ってしまった質問をした人に対してではありません。
質問をした人は、この話を「私は、テレビで聞いただけなので、原典までは知らないです。」と言っていました。これまでもテレビは、科学的事実とは異なる単なる与太話を、あたかも事実であるかのように無責任に発信したことが、何度もありました。かなり腹の立つ話です。

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